彼女は実は男で溺愛で

 アパートに着くと彼はドアを開け、私を中へと招き入れた。
 シンプルなインテリアは、彼のイメージによく合っている。

 入ってすぐは、リビングダイニングのような雰囲気でキッチンも左奥に見える。
 他にも部屋があるのか、入ってきたドアとは違うドアが右奥にあった。

「座って」

 ソファを勧められ、小さくなって腰掛ける。
 思い切ってついてきたのは、考え無しだったのかなと、頭をグルグルさせた。

 彼が私の隣に座って、思わず肩を揺らす。

「怯えないで。意識されていないのかと思って、からかい過ぎたかな」

 流れている髪を私の耳にかけ、彼は自然な所作で私にキスをする。

 ふわふわして、彼の胸元にしながれかかった。

「心配だなあ。こんなに簡単に付いてきたのは、俺だからだと自惚れていい?」

 コクコクと数度頭を縦に動かすと、彼は笑う。

「キス、嫌じゃない?」

 顔を覗き込み、優しく重ねられる。

 返事をする暇もなく、離された唇は2度、3度と重ねられ、そのまま何度も重ねられた。
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