彼女は実は男で溺愛で

 次第に濡れてくる唇は重ねられるごとに、艶めかしさ増していき、たまに胸の奥をキューッと鳴かせて彼にしがみつく。

 唇の隙間から控えめに彼の舌が入れられ、体を揺らした私の反応を伺うように、ゆっくりとキスは深くなる。

 唇が離されると、息の上がる私へ「嫌じゃなかった?」と、答えに困る質問をする。
 そして、またしても答える暇もなく、彼が呟いた。

「もう少しだけ、キスを」

 唇が重なると角度を変え、私の舌を捕まえる。
 深く艶かしくなるキスに私は必死にしがみついて、彼の胸を押した。

 甘い吐息を漏らす彼が「ごめん。嫌? 抑えられなくて」と色気を含ませた声で囁いた。
 私は彼の胸におでこを押し付け、泣きそうな声で訴える。

「背中がゾワゾワって、変な感じがして」

 息を飲んだ彼が背中に指を這わせ、体を捩る。

「そ、染谷さん?」

 驚いて声を上げると、染谷さんは熱っぽい眼差しで私を見つめる。

「大丈夫。それは普通の感覚だよ」

「だって、くすぐったいような、もどかしいような」

 服の隙間から手を入れた彼に、心臓が飛び跳ねて、彼に再びしがみついた。
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