彼女は実は男で溺愛で

 私が動けるようになると、バスルームに案内してくれて『悠里さん』の時に使うシャンプーを使ってと言われた。

 シャンプーやボディソープも、男性用と女性用がそれぞれあった。

「事情を知らないと、女の人と暮らしているんだって勘違いされそうですね」

「アパートの住人には、そう思われているかもね。そうそう、鍵をかけて入ってね」

「え?」

「出来心で覗くかもよ」

 悪戯っぽい顔を向けられ、追い出すように彼をバスルームから出し、すぐに鍵をかけると、ドアの向こう側で彼の笑い声が聞こえた。

 お風呂を出ると、寝室に案内された。
 ベッドだけがある部屋に、なんだか緊張する。

 すると彼は突然私を抱きかかえ、ベッドへと下ろした。

 彼の細いと思っていた腕は思いの外たくましく、軽々と私を持ち上げ、私を押し倒すような構図になった。
< 195 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop