彼女は実は男で溺愛で

 立ち上がった彼はいつもの彼に戻っていて、私に手を差し出した。

「あの、会社では隠すのでは」

 たじろいだ私の手を、彼は強引に引いた。

「キスしないだけでも、褒めてほしいよ」

「本当に未経験なんですか」

 私がぼやくと、彼は不敵に笑う。

「さあ、どうかな」

「染谷さんっ!」

 私が文句を言っても、彼は笑うだけ。
 だって、客観的に見ても彼はモテそうなのに。

 半信半疑に思いながら、彼と一緒に佐竹さんとの待ち合わせ場所に移動した。
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