彼女は実は男で溺愛で
道すがら、染谷さんには話しておいた方がいいだろうと判断して、柚羽と村岡さんの話をした。
柚羽と村岡さんが険悪になってしまっているとは、佐竹さんは知らないだろうというところまでを話す。
「なるほど。ただ、佐竹が史ちゃんと話したい理由は、いまいちピンと来ないな」
「会社で少し話した時に「俺は、彼女に相応しくないんじゃないかって」って弱音を吐いていました」
「面倒だなあ」
頭をかく染谷さんは、気が乗らないような声を出している。
待ち合わせのお店まで、もうすぐだというのに。
「染谷さん、もっと親身になってあげる方だと思っていました」
「夫婦喧嘩は犬も食わないって言うよ」
「夫婦喧嘩とは違うような」
「友達甲斐のないやつ」
「本当。って佐竹さん!」
いつの間にか話に参加していた佐竹さんが、肩を落とし、しょぼくれている。
「俺、勘違いさせるような真似していたのかなあ。そのせいで、更紗に迷惑かけているのかなあ」
「更紗って言うのは」
「村岡さん」
耳打ちして教えてくれた染谷さんと目を合わせ、肩を竦める。
どうやら佐竹さんは、ここに来るまでに飲んできたようで、酔っ払っているみたいだった。