彼女は実は男で溺愛で

 実家には、電車を乗り継いで1時間くらい。
 向こうでのバス移動などを考え、多く見積もっても1時間半もあれば行ける。

 往復3時間。
 日帰りできない距離じゃない。

 それなのに一泊は泊まってきなさいと、彼は言う。

 母に連絡すると、それは嬉しそうに「1泊でも2泊でも泊まっていって」と言われた。

 実家は、廃れ気味の郊外の駅から、バスで15分ほど行ったところ。

 母と父はお互いにバツイチで、父の方にも子どもはいる。
 私にも母にも優しい、いい人だとは思う。

 ただ、どこか馴染めないのは、私の実父は病気で亡くなったのに対し、義理父は離婚している点だと思う。

 それでも、母の幸せそうな顔を見ると、これでいいのだと自分に言い聞かせた。

 家に着き、懐かしい我が家の扉の前に立つ。
 彼らは、母と私が住んでいたマンションに住んでいる。

「ただいま」と言いたくなる玄関で、インターホンを押した。
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