彼女は実は男で溺愛で

 焼きそばを炒めていた母が、皿に盛り付け運ぶ。

 お盆には、母お手製のソース焼きそばの隣に、色の薄い焼きそば。

 私の視線に気付いた母が「これは亮太さんの。お母さんも、最近は塩焼きそばを食べたりもするのよ」と笑う。

 お盆の上には、2皿のソース焼きそばに、1皿の塩焼きそば。
 それを視界に入れないように、目を背けた。

 嫌だ。これ以上、侵入してこないで。
 そんな気持ちが渦を巻きそうになって、頭を振る。

 子供じみている。
 母には母の幸せがある。
 そんなこと分かっている。
 分かっているからこそ、家を出た。

 3人で焼きそばを食べ、私は言葉少なに食べ終わったお皿を手に立ち上がる。

「史乃の部屋、そのままにしてあるから」

 流しにお皿を片付けながら、背中でその声を聞いてキッチンを出た。
< 252 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop