彼女は実は男で溺愛で

 夕食を食べ、そして母に告げる。

「やっぱり仕事が忙しいみたいで、明日は職場に顔を出そうと思って」

「そうなの。残念だわ」

「明日ここから職場に行くよりも、アパートから行った方が楽だから、もう少ししたら帰るね」

 母は亮太さんを見て、それから寂しそうに言った。

「そう。残念だけれど、仕事では仕方ないわ。頑張ってね」

 私は極力、心を殺して帰り支度をした。
 母の前で泣いたり、取り乱すわけにはいかない。

 突然知ってしまった事実。
 それを見ないように蓋をして、電車に飛び乗った。

 早く、一刻も早く悠里さんに会いたかった。
 彼の胸に縋りたかった。
< 254 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop