彼女は実は男で溺愛で

 彼のアパートに着くと、インターホンを押す。

 しばらく待っていると、インターホンの向こう側で驚いている声がした。
 駆けてくる音が近づいて、勢いよく扉が開いた。

「史、ちゃん」

 戸惑った表情の彼に歩み寄って、彼の体に腕を回した。

「寂しくて、帰ってきちゃいました」

 強く抱きついた私を、彼はそっと抱き留めた。
 背後でアパートのドアが閉まった音を聞いて、抑えていたものが溢れる。

「悠里さんっ。私」

「うん。とりあえず中に入ろう」

 悠里さんに宥められ、リビングのソファまで歩くと彼と寄り添って座る。
 抑えていた涙は決壊して、顔はぐちゃぐちゃで。

「悠里さん。私、醜い」

「史ちゃんは可愛いよ」

 穏やかな声を聞いても、私は激しく首を横に振った。

「私、気持ち悪くて、2人が赤ちゃん、そんな」

「え」
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