彼女は実は男で溺愛で
2人の会話を聞いてしまったときに、悠里さんとの艶かしい夜を思い出してしまった。
昨日の自分たちの姿が、父と母に入れ替わり吐き気がする。
ふわふわした恥ずかしくも愛おしかった時間が、穢らわしく惨めな思いに変わる。
「史ちゃん?」
「いやっ!」
彼が私を覗き込もうとした行為から、より鮮明に昨日の情事が蘇りそうになる。
ショックを受けている彼の目を見られずに、顔を覆ってすすり泣いた。
「史ちゃん。なにもしないから」
そっと抱き留める彼の胸に、おずおずと顔を埋める。
彼の腕の中は、いつもと変わらず温かい。
「ごめん。ごめんなさい」
私は何度も泣きながら謝った。