彼女は実は男で溺愛で

 目を覚ますと体に薄いブランケットがかけられていて、キッチンから漏れる明かりに照らされていた。

 キッチンには悠里さんが立っている。

 体を起こし、ぼんやりする私に「起きた?」と優しい声がかけられた。

「野菜スープを作ったんだ。飲む?」

 頷いてみせると、彼はマグカップ2つを手にこちらに戻った。

 息を吹きかけ、口をつけると優しい味がした。

「俺の話をしていいかな」

「はい」

 キッチンだけの明かりの中、一方向からだけの明かりは彼の顔に陰影を作り、余計に物悲しく見えた。

「俺は産まれた頃から貧弱で、成長しても線の細い軟弱な男の子だった。かろうじて性別が男だったって、言った方がいいくらい」

 淡々と語られる彼の話に、ただただ耳を傾けた。
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