彼女は実は男で溺愛で

 たくさんの服を見て、たくさん買ってもらってしまった。

「ダメです」と言っても「悠里側の服を全然買っていないから、その代わりと思って」と言って払ってしまった。

 たくさん歩き回り、休憩に入ったカフェで、私は悠里さんに問いかけた。

「『悠里さん』には、もう会えないんですか。すみません。私が出掛けに嫌がったくせに」

「どうかなあ。必要がないのが、一番かもしれないな」

「そう。ですか」

 私は寂しくなって、キュッと自分の両手を握る。

「ごめんね」

「いえ。そんな」

 彼が『悠里さん』を必要とするのは、どういう時だろう。
 もうずっと、彼側にしか会っていない。

 けれど、その疑問は口に出せないまま。

「帰ろうか」

 彼にいざなわれるように、アパートへ足を向けた。
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