彼女は実は男で溺愛で
夕食は2人で作り、悠里さんと食卓を囲む。
今回は私が得意な、和食中心にした。
「おいしい。史ちゃんは、いいお嫁さんになれるね」
「本当ですか? 私の母が料理上手で」
「うん」
母の話をすると、胸が痛い。
帰りがけの母の寂しそうな表情が、頭から離れない。
「義理のお父さんと結婚して、お母さんを取られたような気がしたのかもね」
「母を、取られて」
「一番いいのは、史ちゃんがお母さんの心配をする暇がないくらい、俺に夢中になることじゃない?」
冗談っぽく言う悠里さんは、手を伸ばし、私の頬に触れる。
「史ちゃんの頬は、下着でどこかへ移動させられないから、ありがたいな」
「え。ぽちゃぽちゃしている頬も、コンプレックなんですよ!」
まん丸で、童顔に見えて。
最近は悠里さんに教わったメイクのお陰で、年相応に見られる場面も増えてきたから、いいのだけれど。