彼女は実は男で溺愛で

 本当は、もっとシャープで。

「私、悠里さんの顔みたいな顔に、生まれたかったです」

 本音をこぼすと、彼は少し困ったように言う。

「自覚ないだろうけれど、すごい称賛の仕方だよ」

「あ、今のは女性のという意味で」

「ハハ。俺は『悠里さん』に妬けばいいのかな?」

「いえ、それは」

 目の前の彼をまじまじと見つめ、それから自分も見られている事実に気付いて顔を隠す。

「ダメですよ。悠里さん、男性でもかっこいいんですから。私を見るより、鏡を見ていた方が目にいいのでは」

「なにそれ。強烈なナルシストだね。俺が自分を好きではなかったのは、知っているでしょう?」

「え」

 それは、そうなるのかな。
 たまに自分を、卑下しているような発言をする時もある。

 私は悲しくなって、そっと彼に手を伸ばす。

 彼は私の手に応えて、私の伸ばした手に自身の手を重ねた。
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