彼女は実は男で溺愛で

「悠里、さん」

「イチャイチャ、してみようか」

「え」

 思わぬ提案に肩を揺らす。

「でも。また親と混同してしまったら」

 また両親と彼とがダブって見えてしまったら、ひどく拒絶してしまいそうだ。

「恥ずかしくても、俺を見続けていればいいんじゃないかな? ダメ?」

 彼が、彼であると、見続けて。

 おでこにチュッとキスをして「眠る用意をしてしまおう」と、彼は楽しげに言った。

 片付けをし、お風呂まで済ませ、準備万端なのが、どことなく恥ずかしい。
 ベッドの端に腰掛けて、彼と並んで座る。

「キスは、しても?」

 コクリと頷くと、そっとキスをして、それからペロリと唇を舐めた。

「ダメじゃない。目を閉じているよ」

「そ、それは。その、癖で」

「俺って分かっている?」

 意地悪に問いかけられ、再び顔が近づいて、私は意識して彼を見つめ続けた。
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