彼女は実は男で溺愛で

「逃げないで。ごめん。箍が外れた。頭を冷やしてくるから、下着いつものにしてくれないかな」

 彼はそれだけ言うと私から体を離し、寝室から出て行ってしまった。

 震える指先を、胸に抱きとめる。

 どうしよう。
 前回とは違う急な展開に驚いたし、少し怖かったけれど。

 嫌じゃなかった。

 あのまま、彼と続けていたら。
 そう思うだけで、ドキドキと鼓動が速まる。

 両親の姿なんて浮かぶ余地もなく、彼でいっぱいで。

 私は急いで、いつもの下着に取り替えた。
 わざわざ退室した彼の前で、淫らな自分でいたくなかった。

 しばらくして戻ってきた彼は穏やかな顔で、私のおでこにキスをする。

「怖がらせてごめんね。今日はもう寝よう」

 そう言って彼は私を抱きしめて、眠りについた。
 私は自分の気持ちを言い出せないまま、眠れない体を無理やりに寝かしつけた。
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