彼女は実は男で溺愛で

 キャーキャー言いながら、気持ちのいい汗をかく。

「上手だね。ハンデあげるよって初めに言い出さなくてよかったよ」

 タオルで汗を拭く、彼は爽やかなスポーツマンだ。

「高校と短大で少しやっていたんです」

「そっか。俺も大学のサークルで」

 こんな爽やかな人が部活内にいたら、色めきだって大変だっただろうなあと、余計な心配をする。

「ここのテニス場、温泉も近くにあって。と、そっか。一緒に入るわけには、いかないよな」

 ハハハッと軽く笑う彼は、頭をかいている。

「入れたとしても、入りませんから!」

 ピシャリと言うと、彼は笑う。

「いや、いやらしい意味じゃなく、男とばかり来ていたからね。史ちゃんとも一緒にテニスして、一緒に温泉にでも浸かれたら、いいなあと単純に」

「下心がなかったわけじゃないけれど」とボソッと呟く悠里さんに、今度は私が笑う。

「悠里さんって、中世的で草食だって思っていたのに」

 私が笑いながら言うものだから、悠里さんはブスッとした顔で返す。

「俺だって、そう思っていたさ」
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