彼女は実は男で溺愛で

 ドッドッドッと、自分の心臓の音が煩わしい。
 ベッドの端に腰掛けた、彼の隣に座るのを躊躇する。

「あの、なんだか、すごく緊張してしまって」

 顔を上げた彼は、頬を緩ませた。

「ハハ。俺も。なんでだろう。そのために帰ってきたっていう辺りから」

「どうしてか焦ってしまって。あ、悠里さん、日焼けしています」

「どこ?」

「この辺りっ、ひゃあ」

 彼に抱き寄せられ、悲鳴を漏らす。

「あとで、化粧水パックしなきゃ」

「今、した方が」

「ダメ。待てない」

 熱を帯びた彼の眼差しに捕らえられ、目が逸らせなくなった。
 引き寄せられるように、彼と顔を近づけて唇を重ねる。

 ゆっくりと彼が体のラインをなぞり、彼の体にしがみついた。

「待って」

 そう言って、体を離した彼が、部屋着のTシャツを脱ぐ。
 シャツを捲り上げ、腕を上げて脱ぐ仕草が色っぽくて、見ていられない。

「なに? 恥ずかしい?」

「はい。すごく色っぽくて」

 カーテンから漏れる日差しは、まだ明るくて彼の裸体を隅々まで映し出す。
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