彼女は実は男で溺愛で

「可愛い」

 彼が耳元で囁いた声を聞いて、体が熱くなる。
 
 彼はゆっくりと私に触れ、隅々まで愛した。
 彼は熱い息遣いをさせながら、時折困ったような、切ないような顔をさせる。

 その表情が心配になっても、彼から与えられる刺激に意識が遠のきそうになり、思いは彼に伝えられない。
 彼に必死にしがみつき、堪えきれない声を漏らす。

 何度か気が遠くなったとき、不意に彼の体が離れていった。

 え。

 そう思っても疑問は声には出せず、混濁としていく意識の中で、知らぬ間に眠っていた。
< 282 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop