彼女は実は男で溺愛で

 目が覚めると、彼はいなかった。
 不安に思って起きていくと、悠里さんはリビングにいた。

「ああ。ごめん。起こしたかな」

「いえ。目が、覚めてしまって」

 今は何時だろう。
 ううん。それより。

 最初の時に感じた違和感を、今回は強く感じた。
 経験がない私にも、なんとなくはわかる。
 たぶん彼は途中で……。

 けれど彼を盗み見ても、いつも通りで。

「お腹、空かない? この時間ならまだデリバリーしてくれるかな」

 時計を見ると9時。
 夜の9時のようだ。

「太っちゃいそうですね」

「ピザにしようと思っていたんだけれど。本格的なマルゲリータがおいしくて」

「マルゲリータ! 大好きです」

「ふふ。たまにはいいんじゃない。明日からは仕事だ。ビシバシしごくから、頼むよ」

 彼は楽しそうに話す。
 その彼をつい、まじまじと見つめる。

「ん? どうしたの?」

「あの、休みが終わってしまうのが、寂しくなって」

 本当は聞きたいのに、聞きづらくて誤魔化してしまう。

「そう。平日は無理でも、休みの日は泊まりにおいで」

「はい」

 彼は自然に抱き寄せ、私の頬にキスをした。
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