彼女は実は男で溺愛で

 ボディメイク室に向かうと悠里さんは既にいて、里穂さんと談笑していた。
 女性の姿の悠里さんを上手く見られない。

「あ、来た来た。さあ。試着室に入って」

 新しい下着を渡され、戸惑う。

「これは」

「悠里と私が業を煮やして、頼んでおいたの」

「そんな」

「いいから、いいから」

 着ないわけにもいかず、私は渋々下着を替える。
 久しぶりの彼女のボディメイクは強烈で、踏ん張っていないと体を持っていかれる。

「さ、できた。うん。やっぱり体に合った下着の方が美しいわ」

 満足そうに言う里穂さんが、私にこっそり耳打ちする。

「これでまた、悠里を誘惑しちゃいなさいよ」

「里穂さん!」

「あはは」

 楽しそうな里穂さんに、複雑な心境になる。
 気にしているのは私だけで、自分がひどく子どもに思える。
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