彼女は実は男で溺愛で

「さあ。綺麗になったお姫様を連れて帰って」

 悠里さんの前に行くと、悠里さんは目を細めて嬉しそうに微笑んだ。

「また背筋がピンとした気がするわ」

「はいはい。さあ、デートでもどこでも行ってらっしゃいな」

 里穂さんに追い出されるように部屋を出て、悠里さんを見上げる。
 彼女になった彼はいつも通り、穏やかに私を見つめた。

「ごめんなさい」

「ん? なに?」

 上手く説明できなくて言葉に詰まる。

 手がそっと重ねられ、心臓の鼓動が速まった。

「私、今回は自分で買いたかったです。下着」

「そう。うん」

 こんなこと言いたいんじゃない。

「いいのよ。大切に着てくれれば」

 悠里さんは寛大な意見を口にして、それが余計に私は素直になれなくなってしまった。
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