彼女は実は男で溺愛で
「ダメです。いつも、私、悠里さんといるとダメになってしまう」
場違いな八つ当たりなのに、悠里さんは傷ついた顔をしている。
「ごめんね」
謝らせたいわけじゃないのに。
食事を共にして、どこか上滑りしている時間を過ごした。
前と同じように送り届けられ、アパートの前で悠里さんと向き合った。
「それじゃ。ね」
「はい」
「史ちゃん」
「はい」
「なんでもないわ。おやすみなさい」
「おやすみ、なさい」
去り際の悠里さんの顔が、寂しそうに見えて胸が痛くなった。