彼女は実は男で溺愛で

 ぼんやりしていると、突然手を引かれ、部屋へと入れられた。
 もつれた脚が、自分の思い通りにならない。

 手を引いた人物を見て、縮み上がった。
 三白眼の鋭い目つき。
 西園龍臣だった。

「悠里とヤッたんだってな」

 口の端を上げた彼の顔が恐ろしくて、声を上げられない。

「どこがいいんだかって思っていたが、なるほど、なかなか」

 大きな手が伸びて、私を乱暴に捕まえる。

「やだ」

 情けない声が出るだけで、悲鳴さえも上げられない。
 恐怖で脚がガクガクして、もがいた体が会議机を押し、音を立てた。

 その程度の音では、誰にも気付いてもらえない。

「ヤッたのなら、あいつも盛りのついた猿みたいだろう」

 悠里さんを侮辱するような言葉を吐いて、彼は私を引き寄せようと手を伸ばした。
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