彼女は実は男で溺愛で

 なにも喋らず無言まま。
 着いたのは彼のアパート。

 そのまま浴室に連れられ、シャワーを浴びせられた。
 驚きで思わず声を上げる。

「え、服、待って、濡れちゃう」

 訴えた先の悠里さんは、シャワーで濡れている。
 虚な眼差しは妖艶で、背筋がゾクリとした。

 彼はなにも言わず、ウィッグを乱暴に外す。
 短い髪があらわになっても、化粧をした悠里さんは未だ女性のままの姿。

 彼は煩しそうにブラウスを着たまま、ブラのホックを外した。
 柔らかなパッドが、下に落ちる。

 ブラウスは無残に濡れ、透けたブラと、肩紐がずり落ちた片方は胸の膨らみなどない、男の人の胸板が透ける。

 至る所がチグハグなのに、それを気に留める様子もなく、彼は私を壁際に追い詰めた。

 壁に腕を置いた悠里さんは、覆い被さるように私に迫った。
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