彼女は実は男で溺愛で

 悲しくて、背を向ける彼の体に抱きつく。

「悠里さん。どうして」

 恥を忍んで訴えたのに。
 やっぱり私では、悠里さんの恋人は分不相応なのでは、そんな思いが込み上げる。

「ごめん。史ちゃんを傷つけたいわけじゃない」

「私じゃ、その、ダメ、なんですか」

「ダメじゃない。そうじゃ、ないんだ」

「だって」

 後ろから抱きついている私の手を彼はそっといざなって、触れさせる。

「ひゃ」

 服の上から触れた時とは違う感触に、驚いて短く声を上げる。
 すごくいやらしくて、とてつもなく恥ずかしい。

 彼とひとつになっているはずなのに、私はなにも知らないのだと思い知らされる。

「嫌いに、なった?」

「そ、そんなこと」

 でも、やっぱりおかしい。
 愛し合った後なのに、彼だけ……。

「達して、いないの、ですよね。ごめんなさい」

 息を飲んだ彼が、頭を振る。
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