彼女は実は男で溺愛で

「おかしな奴だなって。あんな思いしたくせに「悠里が好きなのか」って聞いてきやがったって」

 悠里さんは、少し困ったように言う。

「もう一発殴ってやりたいくらいだったのに、あんまり楽しそうに言うものだから」

 悠里さんも、彼を好きなんだろうな。

 ずっと前に「彼に、憧れに似た気持ちは抱いている」と言っていたくらいだ。

「それがどうなったら、私が彼に惹かれるって話になるんです?」

 誰かの噂話で尾ひれがついたのならともかく、彼から聞いた内容には事実とほとんど違いはない。

「史ちゃんは俺がモテただろうって、言うし、男の俺を誰にも見せたくないだとか、嬉しくなるような発言もするけれど」

「だって、悠里さんは、素敵で」

「うん。ありがとう」

 照れたようにお礼を口にしてから、彼は自分のこれまでを話し始めた。
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