彼女は実は男で溺愛で

「俺の近くにはいつも龍臣がいて。あいつは目立つし、あの風貌だから。俺を先に知った女の子があいつに行くっていうのは、日常茶飯事で」

「そんな。みんながみんな、彼みたいな人がいいわけじゃ」

 実際に柚羽のように、穏やかで優しい人がいいと言う人もいるくらいだ。
 それなのに、彼は私の意見には聞く耳を持たない。

「俺を襲おうとした女性でさえ、数日後には龍臣の女になっているんだよ。軽くトラウマだよね」

 龍臣さんは、どこまで乱れているのだろう。
 いつか、女性に刺されそうだと、余計な心配が頭を過ぎる。

「まあ、俺に執着されるより助かるけれどね。龍臣は背が高くて、がっしりしていて、俺を男性的でセクシーと言うけれど、あいつこそその代表格だ」

 悠里さんは、彼に強烈なコンプレックスを抱いているみたいだ。
「彼に、憧れに似た気持ちは抱いている」と言っていた、本当の意味が分かった気がする。
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