彼女は実は男で溺愛で
「そうでもないでしょう。不甲斐ない面を、史ちゃんにはたくさん見せていると思うよ」
「それは、そういう面を知れて、ますます愛おしく思うから、いいんです」
「そう。ありがとう」
少しはにかんで言う彼が、本当に愛おしい。
そして彼は続けて言った。
「俺だって同じだよ。どうせなら、史ちゃんは料理が下手であってほしかったね」
「どうしてですか」
「そしたら、俺が全部世話できるでしょう」
彼の願望を聞いて絶句する。
「料理、もっと上手くなってみせます」
「ハハ。楽しみだなあ」
サラダを食べながら、彼は私に質問する。
「ね、両親の悩みはよかったの? ごめんね。俺が不甲斐ないせいで、有耶無耶になってしまったよね」
「悠里さんのせいでは、ううん。悠里さんのせいです」
「そうだよね。ごめん」
謝る悠里さんに、私は重ねて言う。
「こんなに夢中にさせて、悠里さん以外考えられないんです」
肩を竦めると「ハハ。可愛い理由」と彼は笑う。