彼女は実は男で溺愛で

「コロンって! 気にしていたんですよ!」

「そうみたいだね。でも、俺にはそれが可愛かったんだよ。女性的な女の人は、その頃には襲われ済みで、苦手だったからね」

「襲われ済みって、すごい表現ですね」

「ハハ。まあ、色々と屈折していたお兄さんの前に、史ちゃんはまあそれはそれは純粋でね」

 大袈裟な語り口調に、なんとなくブスッとした気持ちで聞いていると、悠里さんは苦笑しながら続けた。

「お金があまりないけれど、どうしても decipher で買いたいんです!って。必死さも可愛くて」

 昔の自分の話をされるのは、なんだか恥ずかしい。
 彼は私の気持ちを知ってか、知らずか、話し続ける。

「たぶん、ショップで買い慣れていないから、キラキラした店員よりも、ボーッとしていた俺が話しかけやすかったんだろうね」

 ボーッとしている悠里さんが想像できないけれど、話はどんどん進んでいく。
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