彼女は実は男で溺愛で

「俺のヘアピンを選んでくれて。嬉しかったよ。金銭的な理由で、俺のを選んだんだけれど、すごく喜んでいて」

 慈しむような表情を向けられ、ドキリとする。
 これは私ではなく、高校生の史乃に向けたものだとわかっているのに、顔が熱くなる。

「「綺麗なお姉さんに選んでもらえて、本当によかった」って言われてさ」

 クククッと笑う彼は、髪をかきあげ私を恨めしげに見つめた。
 非難されているのがわかるのに、彼の色っぽい仕草にドキドキと胸が煩い。

「それまでも、中性的だとは言われていたよ。けれど化粧しているわけでもないし、普通にTシャツとパンツだったのに」

「ご、ごめんなさい」

「うん。当時も「俺、男だよ」って言ったら「わっごめんなさい」って。「でもすごく綺麗です」って」
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