彼女は実は男で溺愛で

 目を細め、悠里さんは優しい表情をして言った。

「その時に、ああ、女になればいいんだ、俺って思って。急に楽になったんだ」

 これには絶句して、目を丸くした。
 息を飲み、呼吸を整えてから、おずおずと質問をした。

「悠里さんが、女性の格好を始めたのって」

「うん。史ちゃんがきっかけ」

「わー。謝ればいいんですか?」

「ううん。気が楽になったって言ったでしょ。祖父はもちろん激昂したけれど、怒れば怒るほど、俺はしてやったりだし、女の時間を作るようになって、男の俺の均衡が保てるようになった」

「でも、だって、女の人に間違えられて、その、襲われかけてショックを受けていたのに」

 私のせいでトラウマをよりひどいものにした結果だとしたら、本当に申し訳ない。
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