彼女は実は男で溺愛で
 メイクが終わると、カウンセリングルームでテーブルを囲み座る。

「里穂さん、ひどい。からかっていたんですね!」

「だってー。あまりにも史乃ちゃんは、悠里がいると喜んじゃってさ。いない時の落胆ぶりったら」

 頭の後ろで手を組んで、あっけらかんとした口調の里穂さんに対し、悠里さんは額に手を当てて頭を抱えている。

「悪戯しそうだから、心配していたんだ。それが、私が来た時の方が悪さしていたなんて」

 悠里さんは頭から手を外し「ごめんなさいね」と、私にこうべを垂れた。

「い、いえいえ。悠里さんに謝られても」

「そうよ。謝るくらいなら悠里がメイクしなさいよ」

「それは」

 口籠る悠里さんに反して、里穂さんは「悠里、こう見えて私より力強いんだから!」と、事実とは思えない理由を口にする。

「それとこれとは、問題が違うでしょう」

 里穂さんの意見をピシャリと跳ね除けた悠里さんは、私に懇願した。

「お詫びにこの後、コーヒー奢らせて」
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