彼女は実は男で溺愛で
「今、私の仕事は、販売促進課の資料作りが多くて。その中の資料で、染谷さんのサインのものが」
「ああ、なるほど」
私が『染谷』の名前を知っている点について理解したような悠里さんに、思いの丈をぶつける。
「すっごく爽やかな好青年なんじゃないですか。彼」
「は」
悠里さんが呆気に取られていても、私の熱弁は止まらない。
「字がすごく綺麗で、指示も的確で。仕事が出来る、知的な男性を思い浮かべて。ってお会いしたことはないんですけれど」
「ハハ。想像力が豊かね」
「どうなんですか。私の想像通りの男性ですか」
彼の姿を脳裏に思い浮かべているのか、なにかを考えているような悠里さんが照れたように告げる。
「どうかな。そのイメージを、本人に伝えたら喜びそうね」
この照れている感じ!
なーんだ。
悠里さんの本命は染谷さんかあ。
ホッとして本音が漏れる。
「いつか染谷さんに会ってみたいなあ」
悠里さんの恋人として紹介されたい。
「そうね。いつか会えるといいわね」
穏やかに微笑む悠里さんに癒されて、龍臣さんの恐怖もなにもかも吹き飛んだ。
なにより、悠里さんが龍臣さんの恋人ではないと知り、心から安心した。