彼女は実は男で溺愛で

「特に女関係が派手な、西園龍臣さん。彼の毒牙にかかった女性は数知れず。それでも旨味があるから、愛人志望も後をたたなくて、困ったものよね」

 柚羽も言っていた『みんな狙っているから』と。

「とにかく気をつけなさい。この会社で人を信用しないこと。そして目立つ龍臣さんと、気軽に話さないことね」

 も、もしかして、昨日、彼と話していたせい?

「あ、あれは彼から話しかけられて」

 私の反論は、凄まじい形相で睨まれて声が萎んでいく。

「例えそれが事実でも、口に出さない方が利口よ。彼から話しかけられるなんて、自分が気に入られているって言いたいみたいに聞こえる」

 飛躍した意見は、軽く笑い飛ばせない。
 現に今、破られた制服がロッカーにある。

「どう、すれば」

 揺れる瞳を向けても、ピシャリと跳ね除けられた。

「自分で考えなさい。私は関わるのは、まっぴら」

「目の腫れを落ち着かせてから来なさい」と言い残し、村岡さんは会議室を出て行った。

 関わるのは、まっぴら。
 そう言いつつ、忠告してくれた。
 これは彼女の優しさだ。

 私は誰を信じればいいのか、いただいたカフェラテを腫れた目に当てる。

 ほのかな温かさが、彼女の優しさのような気がした。
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