彼女は実は男で溺愛で

 午前中は会議室で仕事を進めた。
 仕事の資料を全部持ってね、と言った村岡さんの先を読んだ行動に舌を巻く。

 お昼休みになり、席に戻っても村岡さんはいない。
 彼女に席でお礼を言うのは、迷惑かも知れない。

 お弁当を足元から出していると、声をかけられた。

「史乃っ。お昼一緒に食べよう」

 忘れていた存在を思い出し、ギクリと肩を揺らす。

「あれ。どうしたの? 疲れ目?」

 変化を感じ取った彼女の言葉を、白々しく感じてしまう自分が嫌になる。

 彼女のわけない。
 そう思う端から、その思いが信じられなくなる。

「うん。ちょっと」

「制服じゃないのも珍しいね〜」

 笑顔で感想を言う彼女を、上手く見られない。
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