彼女は実は男で溺愛で
栄養補助食品。
スティックのクッキータイプで、ナッツの入ったチョコレート味。
包装の上に付箋が貼ってあった。
『元気が出て、小腹が空いたら食べてね』
ニコちゃんマークの後ろに、柚羽と書かれていた。
伸ばした手は微かに震え、そのクッキーを胸に抱く。
この子は違う。
絶対に違うよ。
涙が溢れそうになり、慌ててそのクッキーをデスクの引き出しにしまった。
無心になるように心がけ、パソコンに向かった。
定時になると悩んだ末、ロッカーの中のハンガーが掛かる部分に貼り紙をした。
『私は庶民で、つまらない者です。
こんな私を、誰も気に留めません。
素晴らしい人であればあるほど、例え情けをかけられたとしても、それ以上でもそれ以下でもないと思います』
こんなものに効果があるのかは、わからない。
けれど、書いた内容は本心だ。
後継者争いに、花嫁争い。
私とは全くの別世界の話。
私はただ、平穏に過ごしたいだけだ。