彼女は実は男で溺愛で

 今はどちらかと言えば、染谷さんみたいだ。
 クスクス笑っていると、彼というべきか、彼女というべきか、悠里さんが怪訝そうな顔をする。

「どうかした?」

「いえ。見た目は悠里さんなのに、話し口調が染谷さんだったので」

「あ、いけない」

 口元に手を当てた今の彼女は、女性らしい悠里さんそのものだ。

「今まで事務の方の仕事仲間には内緒にしていたから、どうしても事務の仕事の話をする時は男に戻ってしまうんだ」

「内緒って、どうやって」

「こっちのビルでの仕事の時は、自分一人でやっていたからね。撮影スタッフたちは、私のこっちの顔しか知らないってわけ」

「でも、社員でモデルをやっている人も、いますよね」

「みんな自分に必死で、誰も見ていないわよ。木を隠すなら森の中って言うでしょ?」

 女性が多い現場では、女になれって意味?
 いやいや、違うでしょ。

 脳内ツッコミを終えると、悠里さんはクスクス笑っている。

「史ちゃん顔に出過ぎ」

 楽しそうな悠里さんにむくれて見せて、それから私も吹き出して笑った。
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