リグレット・レター
「ごめんね。助けてあげられなくて、ごめんなさい。苦しかったよね?怖かったよね?何も気付いてあげられなくて、ごめんなさい」

泣きながら、エルサは手紙を書く。それはもう届くことのない菊に当てたものだった。便箋にはポタポタとエルサの涙が落ちていく。

引き出しの中には、菊を失ってからエルサが書いた後悔の手紙であふれている。そのどれもが涙で濡れていた。捨てることも、届けることのない手紙は溜まっていくばかりだ。

エルサの嗚咽が、部屋に響いては消えた。



しばらく泣いた後、エルサはもう一度リビングに戻った。ルイーザが「大丈夫か?」と声をかけてくれる。

「大丈夫。ごめんね」

すっかり冷めてしまった朝ご飯を口にする。冷めてしまったトーストたちは、お世辞にもおいしいとは言えない。エルサは、菊が亡くなった時から何を食べてもおいしいとは思えなかった。

「午後からキッチン借りていいか?おやつのシュトレンを作りたい」

シュトレンとは、ドイツでクリスマスによく食べられるお菓子だ。菊に作り方をルイーザが教えていた。
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