雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 その後は、お好きに喋ればいいからと示唆するようにわざとらしく笑ってやった。

 そして、瑛太がトイレから出てくると私達は自然と帰ることになった。

 皆それぞれの飲み物代を支払う。

 やはり今回も割引価格だった。

「ヒロヤさん、いつも安くしてもらって悪いです」

 私がお金を払うときに言った。

「何いってんの、まだ学生の癖に。ここは学割が利くんだから、だからいつでも利用しにきてね。友達紹介も大歓迎だから」

 明るく笑顔で言われると、遠慮する事が失礼なことのように思える。

 ただ、ちゃんと儲かっているのか個人的に気になるが、そういうことは私の口からは聞けなかった。

 だから、店を出たとき明彦に聞いてみた。

「真由ちゃんって、心配しすぎ。あれでもヒロヤさんビジネス上手だよ。ああいう隠れた店は常連さんが一杯ついてるんだ」

「全然、想像できない」

「一人で切り盛りしてるから、あまり忙しくても困るみたい」

 明彦はヒロヤさんのことは何でも知ってると言いたげに、得意そうに教えてくれた。

「だけど、千佳も明彦君もヒロヤさんの店を紹介するから、私はてっきりビジネスのお手伝いのためかと思って」

「もちろんそれもあるんだ。僕たち姉弟はヒロヤさんにお世話になったから、そういうことで恩を返すしかないと思ってるし、それよりもあそこに行くと落ち着くんだ。いっそのこと住み着きたいくらいに大好きなんだ」

「その気持ちは分かるような気がする。いいお店だもんね」

 お店もだが、きっとヒロヤさんの事も大好きなのだろう。

 私もヒロヤさんと会ってすぐに親しみがもてたくらいだった。

 優しいオーラがでてるというのか、お店同様の安心感がある。

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