雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「だけど、内装のログハウス風と違って変わった名前つけてるよね。『艶』って。なんか渋いようでもあるし、スナックみたいな響きでもある。ああいう店ならもっとカタカナ的な名前が合いそう」

「その名前はちゃんとした由来があって、ヒロヤさんなりに意味を込めてるんだ。真由ちゃんにもそのうちわかるかもしれないよ」

 明彦は理由を知っているのに教えようとする気がないように思えた。

 一種のなぞなぞのようで、自分でその理由を見つけないといけないのだろうか。

 そう言われると気になって知りたくなってくるが、私も訊くのはやめた。

 きっとそこにはヒロヤさんに関する謎が隠されているのだろう。

 少しずつ自分で気がついて行く方が人から教えられるよりいいような気がした。

 すぐに教えない明彦も、あまり自分の口から言いたくない何かがあるのかもしれない。

 その後はヒロヤさんの話題はしなくなった。

 皆どこかで謎があると言うことだった。

 明彦と話しているうちに、ふと後を振り返れば拓登と瑛太が適当な距離を保ってバラバラで歩いていた。

 肩を並べて仲良くしろとは言わないけど、朝の二人とはまた違う態度のように思えた。

 私の前では二人はあまり喋らないようにしているみたいで、それがなんだか不自然に見えてくる。

 私が居なければ、二人は普通に話をしているのだから、私がいるから、彼らをそうさせているのかもしれない。

 だけど、一体それもなぜなんだろう。

 一つおかしいと思うと、全てが歪み出してきたような感じだった。
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