雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「それじゃ明日、学校で」

 私が一番に切り出して拓登に声を掛ける。

 瑛太はかっこつけて「バーイ」と言っては、手のひらを拓登に向けた。

 拓登も「また明日」と手を軽く上げて合図してから自転車置き場へと向かった。

 後姿を見送っていると、瑛太があっさりと「それじゃ、またな、真由」と言って、去ろうとした。

 てっきり私と一緒に途中まで帰るつもりだと思っていたので、なんだか予想外だった。

「ちょっと待って、瑛太。どうして今日は素直に帰るの?」

「えっ、なんだよ。いつもなら俺を邪魔者扱いするくせに」

「どうしたの、急に消極的になって。こうなったら最後まで付き合ってよ」

 私が喫茶店でふいに気がついたこともあるし、瑛太とは二人で少し話がしたかった。

 私が挑戦的な目を向けてたのかもしれない、瑛太は面倒臭そうに「チェッ」と軽く舌打ちして、仕方がなく私と肩を並べて歩く。

 なんだか機嫌が悪そうだった。

 早く帰りたい理由でもあったのだろうか。

 私に付き合おうと言ってきたあの態度からは程遠い。

 起伏の激しい態度に私はまた首を傾げてしまうが、結局はそんなことをいちいち気にしてられないと毅然として話し出した。

「ねぇ、瑛太。お願いだから小学生の時なぜ私の頬にキスをしたのか教えて?」

「またそれか。もういいじゃないか」

「どうして、急に隠すの? 私は思い出したいの。それにある程度のこと思い出したかもしれないの。それを確かめたい」

「思い出した? あの時のこと?」

 瑛太は急に動揺し始めた。

 やはり何かそこに大切なヒントがあると私は直感で感じた。

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