雨の滴と恋の雫とエトセトラ
 この日の休み時間、廊下に出るときがあると、つい一組を意識して山之内君に会わないかドキドキしてしまう。

 直接会ったわけではないが、後姿を見るだけでなんだか逃げたい気持ちになってしまうのは、意識をしすぎてるからだろうか。

 一度一緒に帰っただけで、こんな気持ちになってしまうのは少し辛かった。

 そこに池谷君のあの頬のキスがフラッシュバックしてしまい、忘れようにも忘れられなくて落ち着かない。

 とにかく、池谷君が来たせいで山之内君が何か誤解していないか、それが気になる。

 私があんなチャラチャラしたようなのと付き合いがあるなんて思われるだけで癪だった。

 その点だけは誤解を解きたかったが、それを聞かれてもないのに、自ら直接言うのも変なことのように思えて、少しモヤモヤしてしまう。

 山之内君に私のことを変に思って欲しくないのは、やはりどこかで私も何かを期待しているのだろうか。

 そう思うのもなんだか自惚れのいやらしい気持ちのようですっきりしない。

 山之内君にあこがれている周りの女の子達も、変な目つきで私をみているような気がする。

 だけど、山之内君があんな風に近づいてくるから、私も多少はちょっといいように思いたい気がしていた。

 前日の事があってから、山之内君のことが、一編に気になって仕方がなかった。

 なんとかまた話ができないだろうかと思いつつも、いざ姿をちらっと見かけるとドキッとして隠れてしまう。

 それの繰り返しで、挙句の果てには教室から出られないくらい、トイレに行くにも緊張してしまった。

 そんな中でこの日は終わってしまい、やっと学校から離れられると思った放課後、また山之内君が私の前に現れ名前を呼んだ。
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