雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 まるで私を待っていたように、私が廊下に出たとたんにいきなり名前を呼ぶもんだから、体が跳ね上がるほどびっくりしてしまった。

 私の後ろからは、かの子、千佳、みのりが続いて教室を出てきたところで、山之内君が近づいてきている姿に、同じように驚いていた。

「倉持さん、一緒にまた帰れる?」

 まっすぐに見つめる山之内君の瞳はどこか眩し過ぎて、見つめ返すのが恥ずかしくなってくる。

 私はつい後ろにいた友達を振り返ったことで、友達の付き合いがあると態度で示してしまう。

「あっ、そっか用事があるのか。だったらまた今度でいいや」

「あの、もしよかったら皆で一緒に帰りませんか」

 気を遣って思わずそんな受け答えをしてしまったが、山之内君を余計に困らせたかもしれない。

 どこか苦笑いになって、それでも愛想良く応えようとしていた。

「僕がいると、邪魔になってしまうから遠慮しておくよ。それに倉持さんに個人的にちょっと話したい事があったんだ」

 ここまで言われると、なんだかドキドキしてしまう。

 何を私と話したいのだろうか。

 こんなとき、後にいる三人が、私の背中を押して山之内君についていけとでも言ってくれたらいいのに、なんて思ってしまう。

 でも三人も驚きすぎて、気を利かすことなどできないでいる。

 山之内君も私の後ろに居た三人を気にして居心地が悪そうだった。

「また今度でいいよ。別に大したことじゃないから」

 笑顔で大したことじゃないという言葉が出てくると、ドキドキしていた高まりがシュンと萎んで、何かを期待していた自分が恥ずかしい。

 山之内君は私に気軽に接してくるが、それがどういう意味なのか全く読めずに、私一人で一喜一憂している。

 そうこうしているうちに山之内君は、私達に遠慮して「じゃあ、また」と行ってしまった。

 私はその後姿をじっとみていた。

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