雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「真由ってやっぱりもてるんだね」

 みのりが一番暢気な答えだったかもしれない。

「だから、もてるとかそういうのじゃなくて、山之内君とだって、ただ喋って終わっただけなの。ほんとそれだけだよ」

「で、真由は結局どうしたいの? やっぱり山之内君のこと気になるんでしょ」

 かの子にはっきり言われると、答え難くて仕方がない。

 自分でもどうしたいとかわからないくらいだった。

「もちろん、あれだけかっこいい人が声を掛けてくれたんだから、気にならない訳がないじゃない」

 変わりに千佳が代弁してくれたが、ふとその視線がヒロヤさんの方を一瞬向いていた。

 悟られないようにすぐにカップを口にもって、お茶を何気にすすっているが、その態度で千佳もヒロヤさんに気があるように思えた。

 この時は私の話題だったので、千佳のことまでは誰も突っ込まなかった。

「その池谷君って言う人だけど、一体どんな人なの?」

 みのりが質問したその時、カランコロンと軽やかな音が聞こえて、誰か他のお客が入って来た。

 私達は音のなる方向を無意識に見てしまった。

 そして見覚えのある制服を着た、二人の男の子が入って来て、思わず私は「うわっ」と声を上げてしまった。
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