雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「千佳、いつからこの店知ってたのよ」

 千佳の態度で、かなり前からヒロヤさんと親しい事がわかるだけに、かの子にはすぐに教えてもらえなかった事が不服そうだった。

「割と昔からかな。中学の時はさ、喫茶店とか気軽に入れる年でもないじゃない。だからあまり友達に紹介できなかった」

「でもいいところだね。ケーキも美味しいし、とても落ち着く」

 紅茶のカップを手にしてみのりは満足そうに目を細めていた。

「私のことよりも、今日は真由の話を聞きにきたんでしょ」

 千佳に言われてかの子ははっとした。

「そうだった、そうだった。千佳のことはまた今度だ。とにかく真由、昨日のこと全て話してもらうよ」

「はいはい、なんでも包み隠さずお話します。だけど、誰にも言わないでよ」

 それは分かってるとばかりに、皆うんうんと頷く。

 私もこの三人の前では全部知っていてもらった方がいいと、前日起こった事を全て話した。

 それは池谷君のことも含めたために、過去の思い出まで話すこととなってしまった。

 皆は私が話し終えるまで、とにかく静かに聞いてくれた。

「最後、話がなんか枝分かれして変な感じになってない?」

 一通り聞き終わったところでかの子が指摘した。

 第三者の池谷君の登場で、山之内君が走って帰らざることになって、変な方向に行ってしまった結果にかの子は心配してくれている。

「山之内君、だから今日、詳しく聞きたかったんじゃないかな。その池谷っていう男の事を」

 千佳は冷静に分析していた。

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