雨の滴と恋の雫とエトセトラ
「何かしら、皆色々と事情があるもんさ」

 またこの時も千佳はヒロヤさんを目で追った。

 千佳が変わった理由がヒロヤさんの存在ではないだろうかと、ふと私は推測した。

「ちょっと、それよりも、なんか真由の話ができなくなったね」

 かの子が離れたテーブルに座る池谷君を一瞥する。

「でも、事情は全て聞いた後だったし、そこでご尊顔も拝めたし、これで一層詳しく理解できた気がする」

 みのりが囁くように言うと、私を除く三人は露骨にも池谷君の方向に首を向けた。

「まあ、家に帰ったら私もアキからどういう人か聞いておくよ。繋がったお陰で、情報が入手できるからよかったんじゃないの」

 千佳の双子の弟から情報が入ってくると言われても、私にとったら係わりたくないだけに、繋がったことがいいことだとは思えなかった。

 その時、池谷君の笑い声が聞こえてくる。

 逃げられないんだぞとこっちの気持ちを読まれているみたいで、悪夢に思えた。

 なんでこうなるのか、ヤケクソでグラスの水を一気に飲み干してしまった。
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