瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
 今は両目ともに翡翠色を(たた)えている彼女だが、十八歳の誕生日を迎えるまで生まれつき左目が黄金色の片眼異色だった。

 周囲からの好奇の眼差しを避けるため、前髪でずっと片目を隠し生きてきたが、ある日フューリエンの伝説を知る者によって囚われの身となる。

 その情報を得た国王陛下の命令でアードラーのふたりが救出に向かい、ライラを城で保護するという名目でアードラーのひとりであるスヴェンと偽装結婚したらしい。

 とはいえ今では互いに想い合って幸せな結婚生活を送っていると聞いて、レーネはこっそりと胸を撫で下ろした。

 フューリエンもとい片眼異色の宿命を背負った少女たちの話はいつも身につまされる。おかげでつい本音が漏れた。

「大変でしたね」

「え?」

 目を丸くしたライラにレーネは慌てて補足する。

「私の妹も片眼異色なので」

 その言葉でライラはレーネがすべての事情を知っているのだと察した。

「そう、なんですね。でも、きっと十八歳になれば長年の苦労から解放されますよ」

 今は堂々と両眼を晒しているライラだが、この日を迎えるまでには言い知れぬ苦労があった。だからこそ彼女の言葉には重みがある。ライラは笑顔で続けた。

「それに、悪いことばかりじゃありません。つらい思いもたくさんしましたが、片眼異色だったからスヴェンと、夫と出会えたので」

 最後は恥ずかしそうに告げる彼女は、レーネから見ても愛らしい。どこか妹を、ゾフィと重なる。ライラははっと気づいた面持ちになりレーネを見据えた。

「もちろんすべては陛下のご温情があってこそなんです。優しくて聡明で、国民思いの素晴らしい方です。改めてご結婚、おめでとうございます」

 屈託ない笑顔にレーネは曖昧な表情で返すしかできない。そのとき、どこからともなくレーネを呼ぶ声がする。おそらくタリアだ。

 レーネは軽くライラに挨拶し、その場を去った。
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