瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
『ただし特別な存在となったとき、そなたは人間としてもっとも大切なものを……を二度と得られなくなる』

 かまわない。今もこの命以外に大切なものなどないのだから。私は特別な人間として悠久の時を生きていく。そうすれば、きっといつか必ず手に入る。

『終わらせたければ、それを手に入れるか。誰か他の者に同じやり方でこの力を与えよ』

 誰が譲るものか。こんな素晴らしい特権を。

 少女は腹の中で悪態をついた。取り繕う必要がどこにあるのか。どうせ死に際に見る夢だ。現に自分は声を出せていないが、相手とやりとりできている。

 滑稽すぎて夢でも現実でもどちらでもよくなった。

『ならば受け取るがいい』

 神の瞳と同じ金色の鋭く光る剣先が己に向けられる。しかし自然と恐怖はない。どっちみち、この人生は終わりだ。

 次に目を覚ましたとき、彼女は新たな人生を歩んでいた。両親にも恵まれ、寒さや病に苦しむ必要もない。

 ただしその見目は特徴的だった。左右で瞳の色は異なり、左目は黄金色でまさにあの最期にやりとりした神のものだ。

 契約の証。なにより自分は前の人生を覚えている。あれはすべて本物だったのだ。喜びで、全身が震え、少女は神に感謝した。

 それから何人の人生を歩んできたのか。数えようと思えば数えられるが、正直面倒だ。
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