Donut Hole
「好きだ」

そう彼に告白された日、私はとても嬉しかった。だって、私もずっと彼のことが好きだったけど、この恋は叶わないと諦めていたから。

私は、教室の隅にいる地味な人間。でも彼は違う。クラスやみんなの中心にいて、みんなを盛り上げていく。私はただ、彼を見ているだけだと思ってた。

「俺、君の優しいところが好きです。真面目なところとか、芯の強いところとか!付き合ってください!」

彼は頭を下げ、私に手を差し出す。私は迷わずにその手を取った。

「私も、ずっと好きでした。彼女にしてください」

初めて触れた手は、とても大きかった。幸せいっぱいで、彼と手をつなぎながら帰る。

「あ!ドーナツ!」

ふわりと漂った甘い香りに、私は首を動かす。いつからできたのか、ドーナツ屋さんが新しくできていた。

ぐう〜と二人のお腹が同時に鳴る。そして、アハハと二人同時に笑った。

「よし!せっかくだし食べて行こう。もうちょっと話したいし」
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